Jobsさんが退任されて、いろいろ回顧記事が出てたけど、そろそろ落ち着いてきたかな。
ZdnetのAll-time worst tech industry executive decisionsの記事で、一度Jobsさんが放出され、再びNeXTから復帰した話がさらっと書いてあるけど、結果からするとその流れなくして今のAppleは無いような気がするし、仮にその流れがなくてうまくいってたとしても技術革新が著しく前倒しになることはなかったんじゃないかな、と思う。自分がNeXTからの流れで、今Mac OS X使ってるというひいき目も多少あるかも知れないけどね。
結局のところハードとソフトの進歩、そして経済性がリンクして進んできたコンピュータ業界だから、どんなに素晴らしいアイデアがあってもタイミングが合わなければ成功しない。
モバイルプロセッサ、フラッシュメモリ、ディスプレー、バッテリー、こうした技術が揃った今の時代でなければiPhoneは今のiPhoneになり得ないし、そのときにふさわしいソフト技術が揃っていなければやはり今のiPhoneになり得ない。もし違う時代が進んでいたら、iPhoneじゃないzPhoneが生まれていたかも知れないけど、やはり同じくらいの時間が掛かっただろうと思う。
ひとつの製品としてだけ見ていると、それだけが独立して生まれてきた技術のように思われがちだけど、それは多くのパーツから成り立っていて、どのパーツをとってみても、それを開発するのに必要な技術とツールと時間が存在するわけで、必然的にその時代に存在できる理由があって生まれてくる。
ただ、そのいくつもの必然の要素を繋ぎ合わせて製品として具現化するのは簡単ではない。NeXTはいくつも素晴らしい点があったけれど、やはりどこかパッケージとして時代に合ってないところがあったのだろう。素晴らしい先見の明も、ハードが追いつかない、経済性がマッチしない、といったパッケージングの不備があれば成功しない。最近のAppleはこれをうまくやってきた。
自分はJobsさんが復帰してからのAppleしか知らないけど、大きなブレなく、コンシューマにフォーカスした製品を作り続けられたのが良かったのかな、と思う。デザインも機能も、これでもかという程に絞り込んだ製品群は、コンシューマに対して製品の目的を明確にすると同時に、潜在的渇望感を植え付け、やがて出てくる新製品に対する期待感を生むというサイクルを作り出している。
ソフトに関して最後にもう一つ。NeXTから引き継いだOSのアーキテクチャやObjective CなどがMac OS XやiOSで大きな意味を持っているのは言うまでもないけど、今のiOSの立ち位置を実現する上で重要だったのはSafari/Webkitだったのかな、とも思う。ここを技術的に押さえておかなかったら、政治的に振り回されていた可能性が高い。Safariの発表があったとき、まさか!という思いと、やった!という気持ちで、思わず声を上げたのを覚えてる。十分使えるようになるまでには何年も掛かったけど、Safari開発に乗り出した判断は間違いなくAppleにとって正解だった。